ニューヨークとアフリカを舞台に、日本人監督が描く“移民”の物語。リベリアの白い血

結局は変わらない世界、それでも自由を知りたかった。

結局は変わらない世界、それでも自由を知りたかった。

第21回ロサンゼルス映画祭最高賞受賞 第65回ベルリン国際映画祭パノラマ部門正式出品 第31回インデペンデント・スピリット・アワードジョン・カサヴェテス賞日本人初のノミネート

2017.8.5~ アップリンク渋谷ほかにて公開

STORY

西アフリカ・リベリアからニューヨークへ、自由を求めて生きる男がいた。

リベリア共和国のゴム農園で働くシスコは過酷な労働の中で家族を養っていた。
仲間たちと共に労働環境の改善に立ち上がるが、状況は変わらない。
そんな時シスコは従兄弟のマーヴィンからニューヨークでの生活のことを聞き、より良い生活のために愛する家族の元を離れ、自由の国アメリカへ単身で渡ることを決意する。
NYのリベリア人コミュニティに身を置き、タクシードライバーとして働き出したシスコ。
移民の現実を目の当たりにしながらも、都会の喧噪や多種多様な人々が住むこの地に少しずつ順応していく。
しかし、元兵士のジェイコブとの予期せぬ再会により、リベリアでの忌々しい過去がシスコに蘇ってくるのだった…。

INTRODUCTION

あなたの知らない“移民”の世界がここにはある。

本作は内戦の傷痕が色濃く残るリベリアで、政府公認の映画組合と共に制作された初めての映画である。後半には移民の街・NYに舞台を移し、アメリカで生きるアフリカ系移民の日常が鮮烈に描かれる。

主人公・シスコを演じるは、自身もゴム農園で働いた経験のあるリベリア人のビショップ・ブレイ。映画初出演ながら堂々たる演技で、リベリアとNYで揺れる男の感情を見事に体現した。また日本でも根強い人気を誇る元バトルスのタイヨンダイ・ブラクストンが音楽を担当し、映画を引き立たせている。

ベルリン、カンヌが惚れた若手日本人監督と、
制作中に病死した天才カメラマンによる心魂のフィルム!

NYを拠点に活動している監督の福永壮志は、本作が長編デビュー作ながらその手腕が認められ、ベルリン国際映画祭パノラマ部門に招待された。
また『サウルの息子』のネメシュ・ラースロー監督などを輩出した、カンヌ国際映画祭が実施する若手監督育成プログラムに選出され、いま欧米で注目を高めている日本人監督である。
そして撮影の村上涼もまたNYを拠点に世界での活躍を期待された逸材だったが、リベリアでの撮影中にマラリアにかかり、悔しくも33歳という若さでこの世を去った。

ABOUT LIBERIA

リベリア共和国はアメリカで解放された黒人奴隷によって建国され、国名はラテン語のLiber(自由)に由来している。

1980年代から2000年代に2回の内戦が起きており、劇中でもその影響が垣間見える。
内戦後リベリア政府はリベリア映画組合を設立、本作は同組合にとって初めての共同制作作品である。

完成後は『グローリー(2014年)』の監督、エヴァ・デュヴァネイが本作を大変気に入り、自身が指揮する配給会社ARRAY により全米各地で上映された。

LIBERIA

STAFF&CAST

STAFF

監督・脚本 福永 壮志 Takeshi Fukunaga

北海道出身でニューヨークを拠点にする映画監督。
2015年に初の長編劇映画となる本作『リベリアの白い血』
(原題:Out of My Hand)がベルリン国際映画祭のパノラマ部門に正式出品される。同作は世界各地の映画祭で上映された後、ロサンゼルス映画祭で最高賞を受賞。米インディペンデント映画界の最重要イベントの一つ、インディペンデント・スピリットアワードでは、日本人監督として初めてジョン・カサヴェテス賞にノミネートされる。
2016年には、カンヌ国際映画祭が実施するプログラム、シネフォンダシオン・レジデンスに世界中から選ばれた六人の若手監督の内の一人に選出され、長編二作目の脚本に取り組む。

DIRECTOR’S STATEMENT / 監督より

この映画は、リベリア部分の撮影監督を務めた村上涼が自主制作していたドキュメンタリーから着想を得ています。自分にとって同じニューヨークの映像関係で活動する日本人として先輩であり、義兄弟でもあった村上は、2007年と2008年にリベリアに行き、ゴム農園の労働者のドキュメンタリーを撮影しました。プロジェクトの制作を手伝う中で、映像に写っていた、過酷な労働の中でも尊厳とひたむきさを保ち、たくましく生きる労働者達の姿に強い感銘を受け、当時構想していたニューヨークに住む移民の映画の主人公の背景を、リベリアのゴム農園の労働者に設定することに決めました。

インターネットで何もかも知ることができる現代では、“知らない”ということも一つの選択として違う意味を持つようになったと感じます。普段の日常品をただ使って捨てるのではなく、その裏側に関心を持ち、そこで働く人たちを想像することで、消費に対する向き合い方が変わるのではないかと思います 。そのように広い思いやりの気持ちを持つことは、アメリカをはじめとした世界各国が排他主義に移行している近年、より一層必要とされていることのように感じます 。

僕が生まれた場所や文化は、リベリアのそれとは大きく違いますが、この映画を通して伝えようとしているテーマは普遍的なものです。日本人がリベリア人の映画を撮るというのではなく、同じ人として人間を描くということを念頭に、この映画の制作に取り組みました。それぞれの背景にかかわらず、映画を見て頂いた方々に共感を持って鑑賞して頂けることを願っています。

撮影監督 村上 涼 Ryo Murakami

香川県出身、徳島県育ちでニューヨークを拠点にしていた撮影監督。撮影した作品の多くは世界中の著名な映画祭で上映され、数々の賞を受賞している。2013年にリベリアで本作撮影中に重度のマラリアに感染し、ニューヨークの自宅で死去。享年33歳。
村上の他界後、 村上自身の自主制作作品で、本作に着想を与えたリベリアのゴム農園で撮影されたドキュメンタリーが未完成のままになっていたが、福永壮志の製作、村上と多数の制作を共にしたジャド・エールリッヒ監督により再編集され、村上の撮影中の体験を追憶する短編映画『Notes from Liberia』として完成される。
村上の映像、写真作品の多くが鑑賞できるウェブサイトも公開されている。

音楽 タイヨンダイ・ブラクストン Tyondai Braxton(元バトルス)

フリージャズの巨匠、アンソニー・ブラクストンを父にもつ実験音楽家。ワシントンポスト紙をして『この10年で最も評価されている実験音楽家』と評される。中核的な存在を担っていたエクスペリメンタル・ロック・バンド、バトルスの2007年のデビュー・アルバム『Mirrored』は高い支持を得、2009年のソロ作『セントラルマーケット』は、ビヨークはじめ著名アーティストや各方面から絶賛され、日本でも大ヒットを記録した。2010 年にバトルスを離脱して以後、クロノス・カルテット、アラーム・ウィル・サウンドといった演奏集団に作品を提供する傍、BBC 交響楽団等の世界の名だたるオーケストラとともにコンサートを行う。2015年にはアルバム『HIVE1』をリリース。本作のプロデューサーで、実弟のドナリ・ブラクストンを通して本作の音楽への参加が実現した。

共同脚本、プロデューサー ドナリ・ブラクストン Donari Braxton

ドナリ・ブラクストンはニューヨークを拠点にして活動する映画監督。これまでにIFP、フィルム・インディペンデント、ベルリナーレ・タレンツ等数々の著名な団体からの支援を受ける。監督の福永とクリエイティブパートナーとして、長年の間共に作品を制作し続けおり、『リベリアの白い血』では共同脚本とプロデュースを務める。現在取り組んでいる自身の初監督長編映画『ABOVE』においては 、サンフランシスコ・フィルム・ソサイエティーから支援金を受賞し、サンダンス映画祭の脚本家インテンシブラボに選抜されている。

プロデューサー マイク・フォックス Mike Fox

撮影監督の村上涼と共にNYのブルックリン大学の映画学部を卒業後、数々の映画、ミュージックビデオ、コマーシャルをプロデュースする。

2008年に制作を手がけた「INSIDE A CHANGE」はHBO国際ラテン映画祭にて最優秀作品賞を受賞する。

2012年に制作した長編ドキュメンタリー「Bill W.」は、全米各地の映画館で上映された後、米の公共放送局PBSにより放映され、南カリフォルニアの報道団体のRTNAからベストドキュメンタリー賞を受賞する。

撮影監督 オーウェン・ドノヴァン Owen Donovan

ニューヨークを拠点に活動する撮影監督。
監督の福永とは大学時代に出会って以来、数々の制作を共にする。村上の他界後、本作の撮影を引き継ぎ、ニューヨーク部分の撮影を担当。今まで彼が撮影した映画作品はベルリン国際映画祭をはじめ数々の映画祭で上映され、撮影したミュージック・ビデオはローリング・ストーン誌やニューヨーク・タイムズ誌など主要メディアで紹介されている。

編集 ユージン・イ Eugene Yi

ニューヨークを拠点とする、編集者、映像作家、ジャーナリスト。編集で関わった作品は、サンダンス映画祭等著名な映画祭で上映され、編集アシスタントとして関わった『Inside Job』(2010)はアカデミー賞でベスト・ドキュメンタリー賞を受賞する。 現在は自身の初監督作品となる、70年代にアジア系アメリカ人の間にその後何世代にも続く影響を与えた、韓国系アメリカ人の死刑囚についてのドキュメンタリーを制作中。

CAST

シスコ役 ビショップ・ブレイ Bishop Blay

リベリアの内戦から逃れた後にたどり着いたガーナの難民キャンプで演技に目覚める。内戦終結後も、リベリア国内の映画に度々出演し地道に俳優活動を続ける。
国際作品への初出演となった本作は、LAタイムズ誌では、“自然で、魂のこもった演技”と評され、各映画祭で高い演技力を認められる。
劇中で演じる主人公のように、北部のゴムプランテーションでゴムの原料ラテックス採取の労働をしていた経験があり、NY編の撮影後は、アメリカに移住し俳優としての夢を追い続けている。

ジョイ役 ゼノビア・テイラー Zenobia Taylor

ゼノビアは歌手としてリベリアの首都モンロビアを中心に活動し、地元ラジオ局に出演するなどして活動しながらも、女優になる夢を抱いていた。
映画産業が小さいリベリアではなかなか俳優の道を切り開けないでいた中、モンロビアで開かれた本作のオーディションでその素質を認められ、今回念願の映画デビューを果たす。

フランシス役 デューク・マーフィー・デニス Duke Murphy Dennis

フランシス役 デューク・マーフィー・デニス Duke Murphy Dennis

リベリア映画界の名優として知られるデュークは、主演のビショップ同様、戦時中にガーナの難民キャンプで活発に劇団活動を行う。
その後もリベリアで俳優としてのキャリアを着実に築き上げ、数々のリベリア作品に出演を果たす。現地ではラジオ局で働きながら、スタンドアップコメディアンとしても活躍している。

マーヴィン役 ロドニー・ロジャース・べックレー Rodney Rogers Beckley

マーヴィン役 ロドニー・ロジャース・べックレー Rodney Rogers Beckley

シエラレオネ出身の俳優で映像作家。過去に、ラジオ番組、CM、ミュージック・ビデオ、ドキュメンタリーなど数々のプロジェクトをリベリアとシエラレオネにてプロデュース。国連リベリア派遣団にてビデオ・プロデューサーとして、リベリア大統領報道官事務局の活動にも参加した。本作のニューヨーク撮影の為に初渡米した後、カリフォルニアに移住。現在は、タクシードライバー等様々な仕事をこなしながら、リベリアが舞台の長編映画を企画中。

ジェイコブ役 ディヴィッド・ロバーツ David Roberts

ジェイコブ役 ディヴィッド・ロバーツ David Roberts

カメルーンとシエラレオネ出身の両親の元、ニューヨークで生まれたアフリカ系アメリカ人二世。
オフ・ブロードウェイにて俳優としてのキャリアをスタートした後、舞台、映画、コマーシャルにて活躍。
近年はNetflixオリジナルシリーズの『ORANGE IS THE NEW BLACK』シーズン5にて準レギュラーとして出演。俳優業の傍ら詩人としても活動し、マンハッタン・モノローグ・スラムにて3度優勝。現在は、オフ・ブロードウェイ舞台『Black Angels Over Tuskegee』に出演中。

マリア役 シェリー・モラド Shelly Molad

マリア役 シェリー・モラド Shelly Molad

テキサス州出身で、ニューヨークを拠点にする女優。
サラ・ローレンス大学にてクリエイティブ・ライティングの学士号を、ニュースクール・フォー・ドラマにて演技学の美術学修士号を取得。自主制作映画に多数出演する他、テレビドラマ出演や、プロデューサーとしてテレビシリーズを企画する等、幅広い分野で活動している。
また、映画俳優組合のSAG-AFTRA Foundationにて、スペシャルイベントの運営も行い、ニューヨークの俳優コミュニティに根ざした活動を続ける。

説教師役 ジョシュア・ブライ Joshua Milton Blahyi

説教師役 ジョシュア・ブライ Joshua Milton Blahyi

ジョシュアは、内戦時に裸で戦っていた際についた通称General Buttnaked(裸将軍)の名で世界中に知られている。出演したVICEマガジンのビデオ「The Cannibal Warlords of Liberia」はYouTubeで1100万回以上再生されており、2011年制作のジョシュアを取り上げたドキュメンタリー映画「Redemption of General Butt Naked」はサンダンス映画祭で最優秀撮影賞を受賞している。
本作で演じた役のように、内戦後はキリスト教に改心し、戦争中の自らの過ちを償おうとアフリカ各地で説教活動をしている。

労組リーダー役 ジョセフ・デュオ Joseph Duo

労組リーダー役 ジョセフ・デュオ Joseph Duo

内戦時に指揮官として戦ったジョセフは、写真家クリス・ホンドロス撮影の象徴的な作品に写ったことにより、世界的に知れ渡る。
その写真がきっかけで、2007年公開の長編映画「ジョニー・マッド・ドッグ」に内戦中の彼自身を再現したような将軍の役として出演。
内戦集結後は、元兵士や少年兵の社会復帰運動に活発に貢献し、影響力のある人物となっている。